価格 :\ 2,730 (税込)
著者 :エルンスト・ブロッホ
発売日 :2005-05-15
発売会社 :白水社
評価 :★★★★☆ ( 2 のレビューがあります)
ジャンル :単行本
可能時期 :通常24時間以内に発送
ASIN :4560024499
ルネサンスの転換をナラティヴとして大きくとらえ、そのなかにベーメやブルーノなどあまたの思想家を位置づけていく。該博な知識はもちろん、ブロッホらしい大きな世界観が魅力である。と同時に、一次史料を駆使する歴史家たちにくらべれば当然ながら記述はゆるい。講義という性質上、論拠や出典にも、とくにふれていない箇所が多い。
しかしブロッホの魅力は、いわば何者でもなく、ブロッホ自身であるところにある。その意味でこれは哲学者による哲学史であり、思考者の洞察力をよく伝えている。固有のタッチやパースペクティヴはあきらかで、この書き手が、詳細な証明にむけて論を凝縮していくタイプの執筆者でないことはここでも変わらない。ブロッホはむしろ、問題を拡張するために種子を播くタイプの書き手なのである。本書も、あちこち説明しきっていないにもかかわらず、重要な示唆をふくんでいる。読者はルネサンスという巨大なテーマにむけて、自己の視点を見出すためのさまざまな手がかりをゆたかに収穫することができるだろう。
〜 もしかすると、ベンヤミンが『ドイツ悲劇の根源』で忘れられていたドイツのバロック悲劇を発見したように、ブロッホは、哲学史上顧みられることの少ないルネサンスの哲学を、アクチュアリティに満ちた姿において取り出そうとしているのかもしれない。そう思わせるほどに力を込めて、すでに老境に入っていたブロッホが、ブルーノを、パラケルススを、ベーメ〜〜を(このあたりにブロッホは親近感を抱いているようだ)語っている講義のありさまを、明快な訳文で生き生きと浮かびあがらせてくれるのがこの一冊である。
もちろん、もとになっているのは大学での哲学史の講義だから、ベーコンの「イドラ」をはじめ、それぞれの哲学者の基本的な術語についての解説にも事欠かない。しかしその後に来るのは、その術語が語〜〜っているのはこういうことなのだ、ということを鮮やかに描き出すブロッホの解釈である。その白眉はやはり、此岸の世界を「能産的自然」の躍動において肯定するブルーノについての一節であろう。そしてブロッホがこれを、自然的世界の完成者としての人間を浮かびあがらせるパラケルススやベーメの思考によって補完させようとしているのを見るとき、読者はブロ〜〜ッホの力強い希望の唯物論の原像の一つがルネサンスにあることを予感することができる。
ルネサンスの哲学に関心を抱いている者とブロッホの思考に触れてみたいと考えている者の双方にとって必携の一冊である。〜